Best of 推せる哲学者 キルケゴール
もはやこれはわたしの性癖なのだが、めんどくさくて誤解されやすい人が好きだ。
自分で作った思考の渦に自分でハマっているような、いじらしく聡明な人にどうしようもなく惹かれる。太宰治は必修科目。
今回はそんな私が好きな哲学者キルケゴールの魅力について語りたい。めんどくさい人推しの人にはたまらない哲学者だ。
◎経歴
デンマーク生まれの哲学者。実存主義の先駆けと言われている。キルケゴールのスケッチを見たが、ベビーフェイスのベートーヴェンって感じで可愛らしい。代表作は『あれか、これか』、『死に至る病』。正直に言います、どっちも途中で読むのを断念するほど難解だった。それでもわかった範囲であらすじを。
『あれか、これか』
美的で感性的な生活・価値観こそが絶望を産むのです、という話。
享楽を追及する美的生活は常に刺激を求めることで対象を変化させ、変化がなくなると退屈になる。退屈は空虚感に基づいて発生し、それは人間に「眩暈」を起こすものである。(Wikipediaより引用:https://ja.m.wikipedia.org/wiki/あれか、これか)
いや、ハッピーマニアじゃん?
『死に至る病』
絶望こそが死に至る猛毒であるという話。キルケゴール曰く、誰もが「絶望」にかかるという。自分の理想とかけ離れた自分を見ないふりすること、それこそが絶望の発端だと説く。
そこから、成し遂げられない自分を見ないフリして、生きながら死んでいるような、そんな絶望に苛まれた状態のことを「死に至る病」だ、と結論づける。
「生きてくのが面倒なら死んじまうのも面倒だ(amazarashi ポルノ映画の看板の下で)」
を思い出させる内容。
◎キルケゴールの家庭
キルケゴールがこのような哲学に至った起源は彼の家庭環境から見いだせる。
前提として、キルケゴールの父ミカエル(以下ミカエル)はクリスチャンだった。そして、ミカエルはこんなことを思い込んでいた。
「神からの罰として私と私の子供は34歳までしか生きられないのだ……」
なぜそんな思い込みをしてしまったのか?理由は3つ。
①貧困の苦しみから、神を恨んだことがあるから。
後にビジネスでミカエルは成功するが、それさえも彼は神からの罰だと思っていた(確証はないが、厳格なキリスト教はお金儲け=悪という考え方だった事が関係していると思われる)
②婚前交渉を行ったから。
しかも相手は婚約者とは別の女性であり、妊娠にも至った。
③実際に子供の7人中5人が34歳までに亡くなっているから
その父の元で育ち、同じくクリスチャンであるキルケゴールは言うまでもなく自身の先天的なカルマを信じていた。
そのためキルケゴールは34歳の誕生日を迎えた時、信じられなくて教会に自分の生年月日を聞きに行ったんだとか。かわいい(不謹慎)。
◎キルケゴールの婚約破棄事件
私がキルケゴールにハマってしまったきっかけは、彼の恋のエピソードを知ったからだ。
キルケゴールは24歳のとき、14歳のレギーネ・オルセンと恋に落ちる。そしてレギーネが17歳の時に、キルケゴールは婚約を申し込む。レギーネはこれを受諾し、二人はめでたく夫婦に……とはならなかった。一年後、何故か婚約を申し出たはずのキルケゴールが婚約を破棄。レギーネは何度かキルケゴールに考え直すよう説得を試みたようだが、結局キルケゴールは別の女性と結婚してしまう。
キルケゴールが婚約を破棄した理由は明確に分かっていないが、大まかに以下の理由ではないかとされている。
①自分が呪われた生であるから。(キルケゴールの家庭の項目を参照)
②純粋なレギーネを己の負のエネルギーに引き寄せたくなかったから。
ズルくない?????自分から告白しておいてなんだこのいじらしいダザイズムな(太宰の方が後だけど)理由は。
なんていじらしくてめんどくさい!!泣けてくる。見方によっては痛くもある。君はこちら側に来てはいけない……って言ってるようなものでしょう、中二病か?しかも別の女性と結婚したあともレギーネとの親密な仲を続けてるんだから救いようがない。かと思えばレギーネに嫌われようと行動したりする。この救いようのなさ、人間臭さがまた良い。素晴らしい。
◎おまけ キルケゴール名言集
・孤独とは生命の要求である。
・思弁が終わる。まさにその時に信仰が始まる。『恐怖と戦慄』
・人間は思想を隠すためでなく、思想を持ってない事を隠すために語ることを覚えた。『あれかこれか』
・ほんとうに黙することのできるものだけが、ほんとうに語ることができ、ほんとうに黙することのできる者だけが、ほんとうに行動することができる。
◎おわりに
キルケゴールにシンパシーを覚える人も多いのではないだろうか。また次の機会に実存主義についてや、同じ主義であるハイデガーについても記事を書きたいと思う。
長々とした文章になってしまった。最後まで読んで下さった人、ありがとうございました。