cliché

駄文書き。amazarashi/歌詞考察/哲学/本や映画の感想/その他もろもろの雑感 について語ります。

indigo la endから見る恋情①「夏夜のマジック」終わってから振り返る恋

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indigo la endから見る恋情

indigo la endとは、川谷絵音が手がけるバンドだ。主に切なくて詩情のある曲調の楽曲が多い。私は川谷絵音ほど恋情を綿密に描ける人を知らない。

中学生の頃、私は恋愛が嫌いだった。恋愛で何か嫌な事があったわけでも、そもそも恋愛を経験をしたこともなかったけれど「恋愛」というジャンルが好きではなかった。

思い返せば、それは「みんな恋愛にうつつを抜かしてバカみたい」という子供っぽい穿った視線だったと思うのだが、このひねくれは今もまだ消滅しきっては居ない。

そんな私に、人を恋い焦がれることの意味を教えてくれたのは紛れもなく川谷絵音の楽曲だった。

 

川谷絵音が描く恋

彼の音楽には、本当に多種多様な恋が存在する。その中に一つとして型にハマった物は無く、登場人物それぞれが生きているのが彼の音楽の素晴らしい所だ。

世間的に許されていない恋。もう終わった恋。終わらせられない恋。隣にいられることが当たり前ならば、それだけでいい恋。

そのことに気付いてからふと、彼らの恋を精査してみたいと感じた。彼の曲に登場する恋を、分かってみたいと思う。つくづく自分は感じた事を記録しておきたい性分なのだ。

※多分自分は恋愛模様について視力が低いので、「この解釈わかってなさすぎだろ」という部分もあると思いますがその点は許して下さい。

 

夏夜のマジック

 

youtu.be

夏夜のマジックとは2015年にリリースされた楽曲で、おそらくindigo上一番有名な楽曲と言っても過言ではない。歌詞サイトの人気ランキングを見ると、だいたい1位か2位に鎮座している。

 

解り合えなかった恋

この歌は「君」と「僕」の歌だ。Aメロでは一貫して今までの思い出が綴られている。

 

記憶に蓋をするのは勿体無いよ
時間が流れて少しは綺麗な言葉になって
夏になると思い出す別れの歌も
今なら僕を救う気がする 

 Cメロでのこの下りをみる限り、この二人はもう別れてしまっていて、終わった後に訪れた夏夜の歌なのだろう。

 

一番好きな箇所

今なら君のことがわかるような気がする

 私は夏夜のマジックの中で、この一文がたまらなく好き。きっとこの二人は、解り合えない場面が多かったのではないかと妄想する。そうして全て終わった後に、「今なら君の事が分かる気がする」としみじみ思うセンチな夜がある。良い~~~。めっちゃ良い~~~。そして分かる~~~。時間が解決するとかよく言うけど、少し距離を取って眺めてみると身近な人の性格とか、悪癖とか、そういった物を許容できる(ような気がする)瞬間があるんだよね。

そしてそれは夏夜の「マジック」であって、分かることができたようなまやかしだから。割れた花瓶は元に戻ったりしないんだけれど。そういう瞬間があるんだよ。誰しもふと感じる、「何かを悟った気になれる、湿度の高い夜のワンシーン」を切り取って一曲にできてしまう絵音、最高~~~。

 

メロディーについて

私は曲のメロディーについてド素人なので下手なことを言えないのだけれど、曲の感想を書くに当たってメロディーに言及しないのもおかしいのでメモ程度に書くことにする。

正直超センチメンタル!ノスタルジー!最高天才最高!という語彙しか出てこないんだけれど、強いて言葉にするなら夏の夜にぴったりなメロディーですごい。なんというか、聞いているだけで夜景とジメジメした空気感が体感できる感じ。途中のコーラスも儚くて綺麗。メロディーラインがピアノなのも、ジャズっぽくておしゃれだし、儚さがあって美しいな。

 

まとめ

①では夏夜のマジックを聴いて、終わった後に振り返る恋を知った。次は「チューリップ」について書こうと思います。

 

amazarashi歌詞分析①「初雪」ここに居たくないならば進まなければならない

amazarashi歌詞分析について

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amazarashi1stミニアルバム「0.6」

 

作詞を趣味として活動する中で、自分の大きな課題に突き当たることが増えた。それは伝えたいこと、テーマ性が希薄だと言うこと。小手先ではなくて、自分の伝えたいことを込めるためにはどうすればいいのか、ここ最近ずっと悩んでいた。

 

その上でamazarashiを聞くと、曲一つ一つに込められたテーマ性がものすごく強固で、焦点が定まっていると改めて感じた。今までも楽曲を聴いた所感としてブログにまとめてきたけれど、一度しっかり全曲聞き直して、自分の中に落とし込みたい。そういう思いで久々に記事編集場面を開いている。

 

歌詞分析といえど、そんな大層な事は言えない。ただ、作詞を続けてきた上で感じ取れること、曲を聴いて素直に感じること、そういうことを備忘録として残していけたら良いと思う。

また、歌詞の推移を知るために、なるべく時系列順に書いていきたい。なので一番最初は、amazarashiとして初期に発売された「初雪」からスタートする。

 

 

 

初雪

発売日:2010/02/10

収録アルバム:「0.6」

テーマ性:前進

 

青森出身の秋田さんが書く歌詞には、冬のモチーフが多く含まれる。

・初雪

・真っ白な世界

・クリスマス

・コンビニ傘

・冬が来る前に

・カラス

・春待ち

ざっと思い出せるだけでもこれだけある。青森の原風景が、ひろむさんの心に強く残っているのだろう。

 

都会生まれの私にとって、雪は美しいイメージが強い。儚くて、珍しくて、純白である。美化されたそのイメージを、雪国生まれの友人達はよく笑う。積もったら雪かきをしないといけなくて面倒だし、寒いし、見慣れたものだから美しいという気持ちも強く感じないよ、と言う。初めてそれを聞いたとき、そのギャップに驚いたものだった。

 

 

1Aメロ

積もりだしたのは彼女の記憶と 感傷とわずかな後悔
長く伸びる僕の足跡も やがてそれに消されるだろう

 楽曲は青森駅に初雪が降り出す場面から始まる。青森の初雪は大体11月頃から見られるそうなので、この世界はそのあたりの時間なのだろう。

 

登場人物は僕と「彼女=君」。全体を通してみると、君という存在の喪失があったことがわかる。果たせなかった約束を彼女がぽつりとつぶやいている。今までの轍が、思い出や後悔にかき消されるような気がしているAメロ。

 

「記憶、感傷、後悔」といった感情が雪に喩えられている。それに足跡が消される、という描写から、「雪」というモチーフが無情の比喩になっているとわかる。

 

1Bメロ

思えば遠くへ来たもんだ いや と言うより振り出しに戻ったのか

それでもここに留まるよりは いくらかましだと信じてる

 

思えば遠くへ・・・という一文は、ほかの曲でも出てくる裏返しの表現が使われている。

自分以外皆死ねってのはもう死にてえってのと同義だ/しらふ

人間嫌いっていうより人間嫌われなのかもね/ジュブナイル

ここに居たくなってのと どこかに行きたいってのは

おんなじ意味なのかな なんにしろ歩こうか/夏を待っていました

僕以外、皆居なくなるかもな なら僕が消えたほうが早いか/たられば

こういう些細な表現から、主格が俯瞰的な人間であると感じてドキッとする。

 

「ここに居たくない」「息苦しい」という気持ちは生きづらい人の多くが感じたことのある気持ちだと思う。よく、「『死にたい』は言い換えれば全て放り出して誰も自分を知らない場所で好きな事だけしていたいということだ」と話す人がいるけれど、まさにそれに近い。ここに居たくないという気持ちは、前進したいからなのか消えてしまいたいからなのか分からないが、とにもかくにも歩かなければいけないのだ。いくらかましな場所に着くと信じて。

 

1サビ

初雪が風に吹かれて 僕らの街 通り過ぎただけ
君の優しさ風に吹かれて 僕の胸 通り過ぎただけ

 Aメロから、記憶や感傷というものが雪と対応していると読んだ。なので、サビに現れる思い出も雪にリンクしているはずだ。

ふるさとの重い雪が、自分の前進の邪魔をする。それを振りほどいてまで歩いて、一体どこへたどり着けるというのだろうか。

初雪も優しさも、ただの通行人だ。通過点だ。そうして振り切って、歩こうとする主格の小さな葛藤のようなものがここに表れていると思う。

 

2Aメロ

綺麗だなと思うより早く面倒くさいななんて一人ごちる
傘はないし 時間も無い ましてや期待なんてあるはずも無く
ただ向かうべき目的地と焦燥だけは捨てるほどある

面倒くさいと独り言ちる所で、「あっ!進研ゼミでやったところだ!」みたいな気持ちになった。「あっ!友人が言ってたセリフだ!」っていう。

冒頭でも言ったけれど、雪を見慣れた地域の人はそれを対処しなければならない面倒くささが先に来るんだね。

 

「傘」というワードも曲中でよく現れる。

コンビニ傘が土にも還らずゴミでも非ず モノでも非ず/コンビニ傘

「傘が無い」と口ずさむけど むしろ傘を買う金が無い/ラブソング

雨から身を守る手段がないということの象徴として、傘がキーワードになっていることは明白だ。

 

2Bメロ

ただ君がいなくなったことで出来た空白を埋められずに
白黒に見えるの街の景色決して雪のせいではないのでしょう 

 ヤバ。

悲壮感で視界がモノクロになるという表現はよくあるけど、雪と絡めて喪失感を表しているのすごい・・・・・。

 

 

2サビ

振りほどいて僕は急いで出かけなくちゃ

 ここでも、今のしがらみを振りほどいて進みたいという葛藤が繰り返されている。

 

Cメロ

全部嘘だと言い切れたら僕は簡単に歩けるのに
でも大丈夫ちゃんと前に進めているよ 

 こういう人間らしいことを、サラッと書くことが出来るのがamazarashiの好きなところです。

他の曲でも、

この世界に嘘しかないならこんなに楽な事はないよな
たまに本当がまざっているから面倒くさいけど信じてみるんだ/美しき思い出

こういう下りがある。どんなに悲しんでも裏切られても、信じてしまう人間臭さがリアルで好き。

 

ラスサビ

僕はそれに少し泣いただけ 冬の風に心揺れただけ

 ハア・・・。「苦しみや悲しみも通過点」的なメッセージを、こんなに優しく表現できるのすごすぎる。けして押しつけがましくないし、つじつまを合わせの言葉じゃない。だってまだ主格は通過点に出来ていないし、今なお足を進めようと奮闘している。

 

まとめ

ここに居ることが苦しいなら、思い出に後ろ髪を引かれても進まなくてはいけない。それは何も悲しいことではない。優しい思い出も、悲しかった気持ちも全部通行人であって、前進することで何かを失うわけじゃないんだよって言ってもらっている気持ちになる。

勝手な解釈だけれど、きっと秋田さんが上京して音楽活動をするにあたってたくさんの葛藤や衝動があって。それでも打破したい現実があって、そういう前進が積み重なったうえで今があるんだろうなと思う。

自分の中で(他と相対して)よく聴く方の曲ではなかったけれど、改めて聞き直すと本当に重みのある歌詞だと感じたし、素敵だった。

②では「少年少女」について書いていきたいと思います。長々と読んでくださった方有難うございました!

 

 

憧れ続ける限り挫折はない

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好きな言葉

座右の銘ってほどでもないけど、実感を伴って「好きだな」と思える言葉がいくつかある。

以前の記事でも書いたけれど、「嵐が過ぎ去るのを待つのではなく雨の中でも踊ることが人生なのです」という言葉はものすごく心の中に残っている。

私はいまだに雨宿りしかできていない。雨曝しで生きている人を見ると自分の不甲斐なさでふらつくね。

 

もう一つ大事にしている言葉というか、考え方がある。

「憧れ続ける限り挫折なんてない」ということ。

誰かが言っていたような気がするし、というかきっと言っているだろうし、自分で見つけた答えのような気も、する。

挫折って言葉は重たい。冷たくてデカい。諦めが早くて飽き性な私には、挫折というほどでもない小さな終点がたくさんある。

いろんなことに興味が湧いて、いろんなことに首を突っ込んで、毎回毎回自分には無理だってあきらめた。

 

挫折じゃなくて休んでいるだけ

でも、徐々に考え方が変わった。今は一休みしているだけなのだと。

曲作りも、初めはなんにもわからなくて、DAWの操作に戸惑ってばかりだったけど。一ヶ月放置して、また一念発起して触ってみて、一年放置して、また挑戦してみて・・・って繰り返していたら、徐々に形になっていった。音質も悪いし、リズムが不安定だし、まだまだ下手くそなんだけど、いつの間にかやりたいことリストの「曲を作ってみる」にチェックマークがついた。

 

興味が湧いて衝動的に始めた資格の勉強も、一瞬でやめてしまった。でも、またチャレンジしてみるかと思って友達に力を借りたら、今度は合格まで手が届きそう。

 

このブログも、思いつきで始めて、1週間続いたと思ったら一年サボったりしたけど、なんだかんだやめないでいられている。

 

よかった。ズボラで雑で三日坊主で、熱が移りやすくて努力のできない自分だけれど、憧れだけはずっと残っていて、よかった。

 

日記

そういえば自分の数少ない自慢として、日記の継続年数がある。

その年数およそ14年。ノートにきったない字で書き殴った日記×12冊が、本棚の中でほこりを被ってます。

でも毎日日記を書くなんて絶対むり。スケジュール帳が一ヶ月白紙になっている年もあった。

中には、

「4月8日

今日は入学式!気を引き締めてがんばるぞ☆今欲しいものは~~~

 

7月28日

めっちゃさぼっちゃった!☆

今月あった出来事をまとめます!

・○○ちゃんとあそんだ

・成績悪かった

・ママと喧嘩した↓↓

 

みたいな記述もあった。無邪気でウケる。

 

そんな感じで飽き足りまた続いたりして、つかずはなれずでもうこんな年月が経ったと考えると感慨深い。

この自分の日記を見てたら、結局何度萎えてもしぶとくやり直す事って大事だなって思った。

 

今この瞬間も、あーこの努力無駄だわーと思って諦めそうなことがメッチャある。でもたぶんきっと数年後の自分が叶えてくれてる。未来に期待。

 

ただ、この考え方は私みたいにぬらーっと生きている人にしか言えないかも知れない。

人生が変わるほどの恋とか、もう叶えられない夢とか、そういうのにたいしてはきっと当てはまらない。だから、嫌だなあって思った方がいたらごめんなさい。

 

そんなことを書いて、おわります。